
宮本武蔵
宮本武蔵
五輪書
五輪書 地の巻
五輪書 水の巻
五輪書 火の巻
五輪書 風の巻
五輪書 空の巻
独行道
兵法三十五箇条
兵道鏡
兵法書付
五方之太刀道
十智の書
《五輪書 火の巻 》
戦いについて
火は風によって大きくも小さくもなり、変化が激しくきわだったものである
○場の次第といふ事
いずれも場の徳を用いて、場の勝ちを得る
武道、護身術においても重要である。
格闘技においては、基本同じであるが、コーナーやロープやゲージ等あるので、大事な部分もある。
コーナーにつまらないようにする。
ロープ、ゲージにもつまらないようにするのが良いが、逆に利用出来ることもある。
場の徳を生かして勝ちを得る。
例として
太陽を背にすること
出来ない場合は得意の攻撃側に
自分の後ろがつかえないようにする。
場が攻撃の軌道のスペースは広くとっておく
高い所
攻撃しやすいように、追う
足場の悪いところに追う
○三つの先といふ事
懸の先
待の先
体々の先
格闘技においても重要である。
懸の先
我が方から敵にかかっていくときの先手の取り方
待の先
敵がかかってきたときの先手の取り方
体々の先
我が方からもかかり、敵からもかかってきた時の先手の取り方
○枕をおさふるといふ事
敵何ごとにてもおもふ気ざしを、敵のせぬ内に見知りて、敵のうつといふうつのうの字のかしらをおさへて、跡をさせざる心是枕をおさゆる心也。
格闘技においても重要である。
相手の攻撃のおこりを察知し、出鼻や軌道のおこりをおさえその後をさせない。
兵法三十五箇条にもあり
気ざしを知れば、敵を打つに吉、入るに吉、はづすに吉、先を懸るによし。
○渡をこすといふ事
渡を越しては、亦心安き所也。
渡をこすといふ事、敵によわみをつけ、我身も先になりて、大形はや勝つ所也
格闘技においても重要である。
兵法の道理によって危機を乗り切る
ピンチを乗り切った後はチャンスが来やすい
○景気を知るといふ事
敵のながれをわきまへ、相手の人柄を見うけ、人のつよきよわき所を見つけ、敵の気色にちがう事をしかけ、敵のめりかりを知り、其間の拍子をよくしりて、先をしかくる所肝要也。
物毎の景気といふ事は、我智力つよければ、必ずみゆる所也。
兵法自由の身になりては、敵の心をよくはかりて勝つ道多かるべき事也。 工夫有るべし。
兵法三十五箇条にもあり
其場の景気、其敵の景気、浮沈、浅深、強弱の景気、能々見知べき者也。
格闘技においても重要である。
場を読み、有利な場所に行き、相手を不利な場所に追うように 敵のリズム、強弱、スピード、くせ、 相手がスタミナがなくなってきているか、効いてるか、また全盛期か衰退期か等体調を察知する重要性。
色々な事においても人にも景気はある。
○けんをふむといふ事
敵の打出す太刀は、足にてふみ付くる心にして、打出すところをかち、二度めを敵の打ち得ざるようにすべし。
踏むといふは、足には限るべからず、身にてもふみ、心にても踏み、勿論太刀にてもふみ付けて、二のめを敵によくさせざるように心得べし。
是すなわち物事の先の心也。
格闘技においても重要である。
剣を足で踏む気持ちで中に入る。
受けるという意識強ければ、緊張、萎縮、いついたり察知される。
しかも自分の有利な距離に入っていけなくなる。
格闘技においても重要である。 かなりのコツ
○くづれを知るといふ事
敵の拍子ちがいてくづれめつくもの也。
其ほどを油断すれば、又たちかへり、新敷なりて、はかゆかざる所也。
其くづれめにつき、敵のかほたてなをさざるやうに、慥に追ひかくる所肝要也。
格闘技においても重要である。
敵のくづれを察知し、機会をのごさず一気にせめる。
くずれは拍子リズムにあらわれてくるものなので、スタミナでくづれているのか、バランスでくづれているのか、効いてるのか、意図的にリズムを変えているのかよく読み。
相手が復活しないように攻める。 読み間違えてスタミナ消耗した場合、こちらがピンチになる。
○敵になるといふ事
敵になるといふは、我身を敵になり替へて思ふべきといふ所也。
敵といへば、つよく思ひて、大事にかくるもの也。
兵法三十五箇条にもあり
格闘技においても重要である。
敵の身になって考える
敵といえば、心が負けてる時は必要以上に相手が強く感じるものである。
敵も同じで相手もこちらを強く感じるものであるので冷静に分析し必要以上に怖れないことである。
何事も相手の身になって考える。
○四手をはなすといふ事
敵も我も同じ心に、はりやう心になっては、戦いのはかゆかぎるもの也。
はりやう心になるとおもはば、其儘心をすてて、別の利にて勝事をしる也。
格闘技においても重要である。
お互いが四手で張り合った時、お互いが押し合い膠着した場合、相手が押してくるタイミングで片方を引いたり回したりして相手のバランスを崩す。
ような
張り合ったり膠着した場合固執せず、切り替えて、別の利にて勝ちを得る。
○陰を動かすといふ事
何とも敵の位の見わけざる時は、我かたよりつよくしかくるやうに見せて、敵の手だてをみるもの也。
手だてをみては、格別の利にて勝事安き所也。
ゆだんすれば拍子ぬくるもの也
陰
動きの見えぬかげ
心中の動き
影
動きの見えるかげ
動きの兆し
影と陰区分している。
格闘技においても重要である。
敵の心のなかや、何をしかけて来るか読みにくい場合は、こちらから強くしかけるようにみせて、敵の手段を見分けるもので、手段がわかれば色々な方法で勝ち安くもなる。
油断すれば拍子ぬけるものである。
フェイントの重要性とフェイント後の対応をしっかりしないと合わせられる。
リズムも変わってくる。
○影をおさふるといふ事
敵のおこるつよき気指を、利の拍子を以ってやめさせ、やみたる拍子に我勝利を受けて、先をしかくるもの也。
能々工夫あるべし。
陰
動きの見えぬかげ
心中の動き
影
動きの見えるかげ
動きの兆し
影と陰区分している。
格闘技においても重要である。
相手が攻撃しようとしてきた時に、こちらは強く返すとみせて相手に攻撃をさせないようにし、こちらが先手をとる
○移らかすといふ事
物毎にあるもの也
或いはねむりなどもうつり、或いはあくびなどのうつるもの也
時のうつるもあり。
敵うはきにして、ことをいそぐ心のみゆる時は、少しもそれにかまはざるようにして、いかにもゆるりとなりてみすれば、敵も我事に受けて、気ざしたる物の也。
其うつりたるとおもふ時、我方より空の心にして、はやくつよくしかけて、かつ利を得るもの也。
格闘技においても重要である。
敵が落ちつきなく、急いでる感じで速いステップの時なども、こちらはゆったりとかまえゆっくりしたようにみせ、相手がこっちのリズムに引きこまれたらこちらも急に速くしたりリズムを変え、攻める。
逆にうつらかせられないように注意しなければいけない。
○むかつかするといふ事
むかつかするといふは、物毎にあり。
一つにはきわどき心、二つには無理なる心、三つには思はざる心、能く吟味あるべし。
格闘技においても重要である。
相手をむかつかせる、怒らせるということは、何ごとにもある。
一つは危険を感じさせる、二つは無理だと思わせること、三つは予想外のことがおきる。
相手は冷静さをかきその動揺につけこみ勝ちを得る
○おびやかすといふ事
思ひもよらぬことにおびゆる心なり。 敵をおびやかす事、眼前の事にあらず。
或いは物の声にてもおびやかし、或いは小を大にしておびやかし、亦かたわきより不斗おびやかす事、是おびゆる所也。
其おびゆる拍子を得て、其利を以って勝つべし。
格闘技においても重要である。
思いもよらぬこと、眼前だけじゃないいきなりの気合いの声や、自分をゆったり大きく強そうなようにみせたり、相手に見えにくいところからふと攻撃してみたり、奇襲攻撃、フェイント、強弱、速遅等利用しておびやかす。
相手は冷静さをかきその動揺につけこみ勝ちを得る
○まぶるるといふ事
まぶるるといふは、敵我手近くなって、互いに強くはりあひて、はかゆかざると見れば、其のまま敵とひとつにまぶれあひて、まぶれあひたる其うち に、利を以って勝つ事肝要也。
格闘技においても重要である。
敵と自分とが接近して、互につよく張り合って、思うようにならないとみれば、そのまま接近したままより良い方法で勝ちを得る。
接近戦で使える技や、プッシング気味の攻撃、押すタイミングを変化さしたり、膝蹴りや肘打ちやショートフックショートアッパー等、四つ手をはなすのも接近戦でもあるので色々な方法で勝つ。
○かどにさはるといふ事
敵の体のかどにいたみをつけ、其体少もよはくなり、くづるる体になりては、勝事やすきもの也。
此事能々吟味して、勝所をわきまゆる事専也。
格闘技においても重要である。
敵の出っ張った角を狙う
バランスを崩しやすい
体から入って来たら肩口
頭から入って来たら側頭
足から入って来たら膝から下
膝から入って来たら膝上
攻撃してきたら攻撃の先かどを体重のかかって行く方に攻撃する。
○うろめかすといふ事
敵に慥(たしか)なる心をもたせざるやうにする所也。
我時にあたりて、色々のわざをしかけ、或は打つとみせ、或はつくとみせ、又は入こむと思はせ、敵のうろめく気ざしを得て、自由に勝所、是たたかいの専也。
能々吟味あるべし。
格闘技においても重要である。
うろめかすとは
しっかりとした心を持たせない。
こちらから色々な技をしかけ、あるいは打つとみせ、あるいは突くとみせ、または入りこむと思わせ、敵のうろたえたところにつけこみ、思いのままに勝つ。これ戦いの要諦なり。
○三つの声といふ事
敵をうごかさん為
勝ちをしらする声
拍子にのる声
護身術においても重要である。
声により
敵を動かす。
拍子に乗る
○まぎるるといふ事
敵の一方へかかり、敵くづるると見ば、すてて、又つよき方々へかかる、大形つづらおりにかかる心也。
一分の兵法にして、敵を大勢よするも、此心専也。
一足も引く事をしらず、まぎれゆくという心、能々分別すべし。
護身術においても重要である。
敵の一方へかかり、くずれるのをみたら他にせめつづらおりにどんどん攻めていく。
一歩も引くことをせず、まぎれこんで行く
○ひしぐといふ事
敵を弱くみなし、自分は強い気で、一気におしつぶすことをいう。
○山海のかはりといふ事
たたかいのうちに同じ事を度々する事悪き所也。
敵山と思はば海としかけ、海と思はば山としかくる心兵法の道也
格闘技においても重要である。
同じ事を度々繰り返すのは悪いことである。
色々変化をつけて行くのがいい。
敵が山と思えば海としかけたり、海と思えば山としかけるような、意表をつき相手の裏をかくのがいい。
○底をぬくといふ事
其道の利を以って、上は勝と見ゆれ共、心をたへさざるによって、上にてはまけ、下の心はまけぬ事あり。
其義においては、我俄に替たる心に なって、敵の心をたやし、底よりまくる心に敵のなる所、見る事専也。
格闘技においても重要である。
戦ってるとき敵が表面上は負けているときでも、心の底では負けていないと思っていることがある。
そういう場合はこちらも、心構えを替え、敵の闘志をくじき、心の底から負けたと思わせそれを見届けることが重要である。
○新になるといふ事
敵我たたかふ時、もつるる心になってはかゆかざる時、わが気を振り捨て、物毎をあたらしくはじむる心におもひて、其の拍子を受け勝をわきまゆる所也。
格闘技においても重要である。
敵と戦う時、もつれ合い決着がつかない時は、自分の今までの意図や狙いを振り捨て、新しくものごとを始める心もちで、新たな拍子に乗り、勝つ道をらほら見いだすことである。
方針転換
○鼠頭牛首(そとうごしゅ)といふ事
敵と戦のうちに、互いにこまかなる所を思ひ合て、もつるる心になる時、兵法の道をつねに鼠頭牛首そとうごしゅとおもひて、いかにもこまかなるうちに、俄に大きなる心にして、大小にかはる事、兵法一つの心だて也。
格闘技においても重要である。
戦いにおいて互いに細かいところばかり気をとられて、もつれ合うような状況になった時、兵法の道をねずみの頭から、牛の首を思うように、細かな心遣いからたちまち大きな心にかわって、局面の転換をはかることは、兵法の一つの心がけである。
ねずみの細心さと牛の大胆さを兼ね備える
綿密な分析と大胆な攻撃
○将卒を知るといふ事
兵法の智力を得て、我敵たるものをば、皆我が卒なりとおもひとつて、なしたきやうになすべしと心得、敵を自由にまはさんと思ふ所、我は将也、敵は卒なり。工夫あるべし。
格闘技においても重要である。
将は卒を知るということを敵との関係にもあてはめる。
主導権をにぎる。
敵を自由にあやつる
自分のリズム作戦で思いのままに勝つ
○束をはなすといふ事
束をはなすといふに、色々心ある事也。
無刀にて勝つ心あり、又太刀にてかたざる心あり。
さまざま心のゆく所、書付るにあらず。
能々鍛練すべし。
護身術においても重要である。
太刀をはなす
刀にこだわるな
刀を持たず無刀にも勝つ道はあり、太刀を持ちながらも勝たぬ時もある。
○いわをの身といふ事
岩尾の身と云事。
兵法を得道して、忽ち岩尾のごとくに成て、万事あたらざる所。
うごかざる所。口伝。
護身術においても重要である。
兵法の道を心得ることにより、たちまちにして巌のように堅固となり、どんなことがあっても斬られることなく、動かされぬようになることである。
口伝である。
兵法三十五箇条にもあり うごくことなくして、大なる心なり。
心が動かされることなく、動揺することなく、大きな心で戦いにのぞむ。
(参考文献)
宮本武蔵 日本人の道(魚住孝至) ぺりかん社
五輪書 宮本武蔵著 渡辺一郎校注 岩波文庫
五輪書 宮本武蔵 神子侃訳 徳間文庫
五輪書 鎌田茂雄 講談社学術文庫
宮本武蔵五輪書 潮境 藍編著 ソルト出版
五輪書 宮本武蔵原著 大河内昭爾訳 教育社
宮本武蔵の生涯 森銑三 やまと文庫